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外観は「立面図」より「パース」で決める——新潟の工務店が設計時に必ずやること

間取りはまとまったのに、外観だけがしっくりこない。設計打ち合わせでは、実際によくある場面です。こういうときは、設計の順番が前後していることが少なくありません。当社では、外観とプランを最初から同時に考えます。その理由と、外観検討で必ず使うパース(透視図法による立体的な完成イメージ図)の役割を、ここでお伝えします。

月刊アーキテクトビルダー2025年12月号掲載|この章の概要

外観パース_寺社の家

2025年12月号の特集「ザ・アーキテクトビルダーの設計術」では、外観の検討に加え、屋根・外壁・窓・構造・床・階段など13の部位にわたる当社の設計手法を紹介していただきました。特集全体の流れは、こちらの記事にまとめています。

ここでは特集のうち「外観」の章に絞って書きます。取材で伝えたかったのは、立面図(建物を正面から見た設計図)だけでは外観の良し悪しを判断しきれないこと、パースを判断の軸に置くことで初めて「実際に見たときの印象」に近づくこと、この二つです。

外観とプランは「同時に」決める——片方だけ先行すると何が起きる?

間取りを先に固めると、外観で詰まる

当社では、外観の方向性をプランと並行して検討します。まず「この敷地で、どの面をメインのファサード(正面外観)にするか」を決め、その面の外観を整えながら全体のプランを組み立てていきます。

一方、間取りを先に固めて「外観は最後に調整しよう」と進めると、外観は高い確率でまとまりを失います。屋根の形が不格好になる、窓の位置が外観上バラバラに見える、といった問題が後から出てきます。

打ち合わせのなかで「この壁をなくしたい」「窓をもっと大きくしたい」「この場所を移動したい」とおっしゃる建て主さんは少なくありません。それ自体はごく自然な要望です。ただ、その変更が外観の印象にどう響くか、構造上どんな制約が生まれるか、断熱(室内の熱を逃がさない性能)の面でどうなるか、まで同時に見ておく必要があります。だからこそ、最初から外観とプランをセットで見る。当社では、そうした進め方を前提にしています。

ファサード計画が決まると、全体が整理される

敷地の形状、道路との関係、隣家との距離感、室内プランなどを踏まえて「どう整えるか」を決める。それがファサード計画の第一歩です。メインのファサードが決まると、そこに向かって屋根の形、窓の配置、外壁の素材の組み合わせが整理されていきます。

「とりあえず格好いい外観」ではなく、敷地と暮らし方から必然的に生まれた外観。当社が目指しているのはそういった姿です。

立面図では「見えない」——パースを使う理由

外観パース_寺社の家
立面図_寺社の家

上の2枚を見比べてみてください。上が道路から撮影した竣工写真、下が立面図(建物の正面を真正面から見た設計図)です。同じ建物ですが、印象はかなり異なります。

手前の下屋(1階部分の独立した部分)の存在感が、まず違います。立面図では母屋(2階建て部分)と下屋がほぼ同じ面として並んでいますが、実際には下屋がずっと大きく迫ってきます。それに伴い、下屋の屋根面は立面図では見えていたものが、道路からの視線では見えなくなります。勾配が図面より明らかに緩く感じられる理由です。

軒の出と、けらば(屋根の側面が飛び出ている部分)の出がつくる陰影も、立面図からは伝わりません。壁面に落ちる影の深さが建物に奥行きと陰影感を与えていますが、これらは立面図には一切現れません。玄関アプローチの奥行きも同様です。屋根が深く伸びた大らかさは、実際にその場に立って見るまでわかりません。

パース検討と完成写真_寺社の家

実際の設計検討では、下屋のけらば部分だけでパースで3案を並べて比較しました。けらばの出をなくしてフラットに納める案、けらばを出した上で破風(屋根の側面に付く板材)を設ける案、けらばは出さず破風だけ設ける案の3つです。

比べてみると、けらばを出して破風を設けた案(上段右・採用案)が、軒を深く出した建物全体とのバランスが最も整って見えました。屋根に陰影感が生まれ落ち着きが出ます。けらばをなくすとすっきりはしますが、今回のケースではやや平坦となり、建物全体のバランスが崩れる印象でした。

「どれが正解か」はありませんが、パースで実際の見え方を比較、判断するしかない部分です。

パースは「判断の道具」

パースは、見た目の確認だけの道具ではありません。立面図だけでは拾いにくい要素を立体的に見せ、設計判断の精度を上げるための実務ツールです。屋根の勾配や形状を変える前後でパースで比較する、窓のサイズを変えたあとの外壁バランスを確認する。こうした使い方が、「完成してから気づいた」という事態を減らすことができます。

積雪地だから避けられない——雪止め・雨樋・棟換気の「見え方設計」

雪止めはファサードに「写り込む」——屋根を整える細かな配慮

新潟など多雪地域では、屋根に雪止め(積雪が一気に落下するのを防ぐ金具)を設置することが必須です。ただ、雪止めが外観の印象まで大きく左右することは、住宅設計の現場でも意外と見落とされがちです。

たとえば妻壁(切妻屋根の三角の端面)がメインのファサードになる場合、棟換気部材(屋根の頂部に設ける換気のための部材)や雪止めが妻面から見えると、外観のすっきりした印象が損なわれます。当社では、地上から見たときに屋根上の金物や部材がどう見えるかを考慮し、金具や部材を妻面から数百mm後退させるなどして実際の見え方で調整します。雨樋(あまどい)の縦樋の位置も、ファサード面から目立たないよう、設計段階で取付け位置を検討します。こうした細部の配慮の積み重ねが、外観のシンプルさに繋がると考えています。

屋根雪止めのバック

屋根棟換気のバック

けらばを薄く見せる納まり——屋根を軽やかに見せる

切妻屋根のけらばは、厚みを抑えるほど屋根全体が軽やかに見えます。通常の木造在来工法では、構造の母屋材を跳ね出し、その上に屋根を作るため、屋根が野暮ったく見えがちとなります。そこで当社では、2×4工法の考え方を取り入れ、垂木自体をけらば方向に跳ね出して屋根を支持する方法で、屋根を構造的にも成立させ、意匠的にも薄く軽やかに仕上げるという手法を用いています。

ケラバ垂木による屋根

ケラバ垂木

同じ切妻でも、こうした納まりで外観はより端正でシャープな印象にまとまります。

この章固有のQ&A

Q1. 外観を整えることを最優先にすると、間取りに制約が出ませんか?

間取りと外観は、どちらか一方を優先するものではなく、常に両方の関係性を考えながら設計しています。外観の印象だけで決めてしまうのでも、間取りだけで押し通すのでもなく、両方のバランスが取れたときに心地いい住まいになる、というのが私たちの考え方です。外観と間取りの間には常に制約があることを前提に、調整を重ねてバランスの良い形を探っています。

Q2. 母屋と下屋の屋根勾配が異なるとき、外観のバランスはどう整えますか?

まずパースで実際の見え方を見ながら、勾配を調整します。母屋の屋根は高い位置にあるぶん、現地では緩く見えます。全体のバランスを整えようとすると、下屋はさらに緩い勾配になりやすいです。母屋が3.5寸勾配程度、下屋が2寸勾配程度という組み合わせになることが多いのは、その延長線にあります。

まとめ——外観の美しさは「見え方の設計」から生まれる

外観の良し悪しは、図面の上ではなく、実際に立って見たときの印象で決まります。だからこそ当社では、設計段階ではパースを判断の軸に置き、プランと外観を同時に検討します。

新潟という多雪地域の条件を踏まえた計画、竣工後10〜20年を見越した素材の選定、使い方。「今だけでなく長く美しい外観」への積み重ねが、当社の家づくりの根底にあります。

屋根の納まりや勾配の話は、屋根の詳細記事(近日公開)で踏み込んでいます。

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投稿者

山口 雅和

新潟、阿賀野市で活動する山口工務店の住まいづくりブログ。自然素材をシンプルに使い、エアコン1台で全館空調、温度差の少ないエコハウスを建築。ブログでは趣味・指向、雑記なども書いています。

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