今月12月号の「月刊アーキテクトビルダー」で当社取材記事が掲載されました。
全国に数多とある工務店の中で、定期的に取材のお声がけをいただいて感謝しかありません。が、取材後に頼まれた図面や写真点数が過去最高のボリュームで心が折れそうに・・・(笑
目次
超鉄板ディテール<半外部編>|アーキテクトビルダー
今回は、テラスやポーチ、カーポートなどにスポットを当てた「超鉄板ディテール<半外部編>」と題した特集になっています。
この中でありがたいことに全19ページに渡る長編で写真、図面と共に掲載していただきました。
本日、出版社の新建ハウジングさんから掲載号「月刊アーキテクトビルダー」も届きました。
ブログは遅筆ですがSNSでは速報的にこの掲載情報もリアルタイムで出していますので、よかったフォローしてください。
半外部空間グレードアップ設計術
建築の豊かさは単に室内の設えだけでなく、外部との関係性を持ち、外から豊かさを取り込むことで、より暮らしの質が高まります。
こうした視点から、今回は屋外を設計的にどのように室内に取り込むかについて、取材記事と合わせて弊社山口工務店の設計手法、施工方法を実例写真や実施図面をそのまま掲載しています。
こちらが原稿を元に頼まれて送った写真と図面一式。
改めて紙面と突き合わせるとほぼ掲載されたようで、ボツにされずひと安心(笑
ざっくり紙面解説
掲載された全19ページのほんの頭の触り部分だけ、新建ハウジングデジタルのページ「実用性・意匠性も兼ね備え、洗練された「半外部空間」を実現」で公開されています。全編は定期購読をご検討ください(笑
大人の事情でここに紙面まるまるは掲載できませんので、紙面のアウトラインをなぞりながら、掲載された写真や図面の一部と共にご紹介していきます。
半外部の空間の重要性
- 南側に向け開口部を開き日射取得を確保、それ以外の面は原則閉じてもよし。
- リビング掃き出し窓の先にはウッドデッキを。デッキが中間領域となり内外を繋げる。
- ウッドデッキには屋根を掛けることで活用頻度が圧倒的に高まる。
- リビングに土間空間を設け、そこから外部に繋げるケースもあり。
「豊かさは外からやってくる」と考え、リビングと外部は自然と繋がる工夫を設計に織り込む。内外の障壁である壁を開口部(窓)に置き換え、ウッドデッキや屋根下空間という中間領域を設けることで自然と内外が繋がっていく。
LDKの窓配置の基本
- 窓(サッシ)は樹脂サッシ+Low-Eトリプルガラスが標準仕様。
- 高性能樹脂窓で熱損失を抑え、大開口の眺望を両立。
- 内外の連続性をつくるため小壁(垂れ壁)を設けない、サッシ高さに天井を合せる等。
- 掃き出し窓の先に同じ高さでウッドデッキを設け、床が外まで繋がる印象に。
窓を一体に見せるための工夫
- 複数の窓を連続配置し一体に見せる。
- 開口部に設ける断熱ブラインド「ハニカムブラインド」を隠す幕板は横に通す。
- 外から見る複数の窓も、霧除けを兼ねた木製3方枠や戸袋風の板壁で一体化し統一感を。
ベンチを設けてウッドデッキとつなぐ
- 天井高がサッシ製作高さを超える場合、窓辺に小上りを設け天井にサッシを合せる。
- LDKの一部に畳小上りを設けた場合、外部デッキの段差はベンチに。
- リビングの一部を土間にした場合、外部は室内土間に合わせてテラス土間を設ける。
ウッドデッキには屋根が欠かせない
- ウッドデッキは子供の格好の遊び場に。
- デッキの奥行きは最低でも4.5尺(1.3m)、可能なら6尺(1.8m)は欲しい。
- デッキの間口は掃き出し窓の幅は最低必要。
- ウッドデッキを活用するには屋根がデッキ全体に掛かっていることが重要。
袖壁と木塀で視線と風を調整
- 外部に設けた袖壁で隣地からの視線を遮り、立地により風よけにも。
- 袖壁は外観をまとめる効果も担う。
- 道路からの視線は木塀(ウッドフェンス)や植栽で遮る。
- 常緑樹なら通年で視線を遮れる。
エステックウッドは10年以上もつ
- 木のウッドデッキは腐って持ちが悪いは過去のもの。
- ウッドデッキや木塀にはエステックウッドを標準採用。
- エステックウッドは天然木のスギを高温処理しセルロース等を変性し防腐防蟻性を確保。
- 10年以上経過したエステックウッドの採用物件は新潟の雨雪に曝されても健全。
- 樹脂成型デッキでは夏場に高温で素足で歩けない。
エステックウッドで木塀を高耐候化
- 高耐久なエステックウッドの木塀(ウッドフェンス)の施工にも更に一工夫。
- ウッドフェンスは部分交換を想定した作りに。
- 柱脚が最も腐朽しやすいため、溶融亜鉛メッキアングルを支柱に。
半外部を覆う屋根の工夫
- カーポートは建築一体で屋根をつくる。
- 雪国新潟ではカーポートから玄関までが連続していることは日常の利便性に直結。
- 屋根勾配は外観意匠を踏まえ決定。
- 下屋の高さ、窓の位置や高さを検討しプロポーションを整える。
- 雨戸はガルバの半丸を採用。雪国では強度の低い製品は使えない。
- 屋根を薄く見せるディテール。構造用合板24mmを野地板としそのまま跳ね出す。
丸形鋼管の柱を用いたすっきりとしたカーポート
- 丸形鋼管の柱を製作。直径76.3mm(65A)と89.1mmm(80A)2種類を使う。
- 表面処理は溶融亜鉛メッキ後にリン酸塩処理をしマットな質感に。
- 柱頭柱脚部には取り付きを踏まえたプレートを溶接。
玄関ポーチの仕上げと手摺りの工夫
- 玄関土間、外部ポーチの仕上げは洗い出しか墨モルタルを採用することが多い。
- 玄関ポーチには屋根を掛け、格子板貼りとすることで緩やかに視線を切る。
- ポーチ柱は特注製作の柱脚金物で固定。既製品よりも木の耐久性が増し意匠性もよい。
- 手摺はスチールのフラットバー12mmで製作し溶融亜鉛メッキ処理。
- 手摺はシンプルに作り建物本体を邪魔しない。
まとめ
全国の住宅会社、工務店がデザインや技術のムック的書籍として購読するアーキテクトビルダー。
毎号色々な部分にスポットを当てた実践的な特集が組まれる中での今回の「超鉄板ディテール<半外部編>」として、当社の普段の仕事や設計的な考え方をまとめてもらいました。
普段から奇抜なデザインはないが、シンプルで普遍的、機能的な設計ができないかと考え、先人からも多く学ばせてもらったものが今の山口工務店の仕事になっていると思います。
多くを学ばせてもらったのだから恩を返したい。このアーキテクトビルダーを手に取った誰かにほんの一部でも仕事のヒントに繋がるのであれば私も励みになります。